■受け口とは…
上の歯より下の歯が前に飛び出ている状態の事。

■しゃくれとは…下顎が長く前に突き出した状態の事。

取材陣(以下、取)／「受け口」（下顎の前突）についてお教え下さい。

原口先生(以下、原)／
はい。これは「下顎前突症」もしくは「反対咬合」といって、
通常は上の歯が下の歯の前に被さっているはずのものが逆になっている状態で、程度にもよりますが保険治療が可能になります。
　
治療方法は出っ歯の治療とほぼ同じで、一般的に下顎の骨を切って、奥にずらしてワイヤーやプレートで固定するといった外科的処置が必要です。
　
この場合、何よりも噛み合わせの問題が重要となってくるので、歯科と形成外科との合同治療になります。規格写真という同一の条件でレントゲン撮影を行い、下顎骨あるいは上・下顎骨の両方をどの様にどの程度移動させるのか綿密に計画して手術します。
　
これは全身麻酔の手術で骨が安定する迄入院が必要なもので、しばらくは流動食になります。入院施設の無い当院での処置は出来ませんが、信頼の出来る病院を紹介させて貰っています。この手術は口腔内からの処置なので、術後の傷も目立たず粘膜は修復力が高いので傷跡もキレイになります。
　
又、下顎が横にずれていたり、口元のラインが真横ではなく少し斜めになっている様な状態のものを「顎変形症」と言います。

これもレントゲンやCT写真を撮影し治療法を検討し、外観だけでなく噛み合わせを正常に戻す治療を行います。
　
これらは、程度によっては歯の矯正で解消される場合もあります。治療法の向き不向きや改善度合い、治療期間や費用等を踏まえた上で、自分にはどの治療が良いのか、どの程度の改善を求めるのか、医師としっかり話し合って決めて頂きたいと思います。

取／では次に「しゃくれ」の解消法についてお教え下さい。

原／ はい、施術時間1～1.5時間の全身麻酔下手術（場合によっては局所麻酔可）です。
　
口腔前庭（唇と歯茎の境目）部分を切開し、余分な骨を切除し形を整えて縫合します。(詳しくは、*にーにゃＷＥＢ原口先生のバックナンバー「頬･エラ･顎の膨らみ」をチェック！)顎が長いという場合、バランスを見て下顎骨の短縮を図り、顎先の骨を少し前にずらして固定し、より自然な顎のラインを作る場合もあります（※図１）。遠方の方の場合は近くのホテルに宿泊して貰う場合もありますが、基本的に日帰り手術です。

　 術後は、うがい薬での口腔内の消毒、抗生物質・腫れ止め・痛み止めの服用、患部の冷却が必要です。
　
１～２日後に、創（キズ）と患部のチェック。口腔内の縫合には吸収糸を使うのでいずれは吸収されますが、原則的に1週間後に抜糸します。
　
そして、1ヵ月後・3ヵ月後と術後の経過を見ていきます。術後の注意事項としては、口腔内を切っているので数日は塩分を控えた食事や柔らかいものを食べる様にして貰っています。　又、入浴は出血が止まる2日目位から半身浴程度であれば可能です。親知らずの治療と同じ様な腫れがしばらく続きますが、時間と共に軽減していきます。又、治療部位がオトガイ神経（舌や唇の周囲の感覚神経）の近くの為、痺れ感がしばらく残る事もあります。
　
上記２例の手術の様に骨切り部を固定するプレートが必要な場合、以前は金属のプレートを使い、そのまま体内に残したり、骨癒合後に抜釘手術を行う事が多かったのですが、体内に金属があるとＣＴを撮る時に金属部分がハレーションを起こし診断しにくくなったり、MRI撮影では磁石に引き寄せられたり金属が熱されて軽い火傷状態になる事もありました。
　
その事を踏まえ、最近では金属ではなく体内で吸収されるプレートが出てきて、より安心して手術を受けられる様になってきました。

取／なるほど。これから治療を考えている方には朗報ですね！　今回も大変勉強になりました。

■料金 （原口クリニックの場合）
■料金 （原口クリニックの場合）
●顎骨削骨術……………525,000円（術後処置、内服薬代含む）

※初診料は1,050円です。※全て保険外治療