取材陣(以下、取)/アートメイクやタトゥを消す事は可能なのですか?
原口先生(以下、原)/はい。どちらも同じ刺青なので、同じ方法で消す事が出来ます。大きく分けると、「削皮(皮フ表面を削る)」「切除」「レーザー」の3つです。
取/ではまず、アートメイクの場合はどうですか?
原/アートメイクの場合、眉やアイライン等毛が生えている部分になるのでタトゥより複雑で難しいです。
黒色に反応する光・レーザーでは眉毛やまつ毛が白髪になったり、脱毛してしまうので出来ません。基本的には毛根にかからない深さ迄皮フを削り取る(削皮)あるいは切除という方法になります。
メスや炭酸ガスレーザーを用いて、毛を避けながら色素の入っている深さ迄皮フを削り取っていきます。深さが浅く均一である場合は、一度の施術で色も落ち、傷痕も殆ど目立ちません。赤みが暫く続きますが化粧で隠せる程度です。
しかし、毛根の深さに迄色素が入っている場合は、毛根を残す為に薄く色が残ってしまいます。そのまま残すか毛根迄切除するかを選択する事になります。毛根迄切除した場合は、毛はもう生えてきません。化粧でカバーするか、前回紹介した植毛をする事も可能ですが、自然の眉毛やまつ毛にはかないません。
【アイラインの場合】
ラインを太く入れてしまった為に施術を希望される方が多いので、まつ毛にかかっていない部分のみを切除・縫合して、残りのまつ毛の根元部分はそのまま残す、もしくは削皮で薄くする事が多いです。
【まつ毛の場合】
切除後から抜糸迄の約5日間は消毒をして頂きます。傷痕は目の際なので殆ど目立ちません。
【眉の場合】
まず毛根の上迄削皮をして色の残り具合を見てから切除するか、そのままか決断する方が多いです。傷が落ち着く5~7日間は消毒ガーゼ。1ヶ月後・3ヶ月後に皮フ・色の状態を診察して様子を見ます。「削皮」のみの場合は、暫く赤みと擦り傷のような痕が残りますが徐々に薄くなります。「切除」した場合は、アートメイクのラインに沿って縫合し、線の傷が残りますが、徐々に薄くなってきます。但し眉毛はなくなるので、流行に合った眉毛をその都度描いて頂く事になります。
また眉毛を残した場合は剃毛して頂くか、後日脱毛する事で処理出来ます。
術後の化粧に関しては、「切除」は抜糸後から「削皮」は薄く皮が張る5~7日後から可能です。
取/では、タトゥの場合はどの方法で治療するのですか?
原/状態や色、範囲によって変わってきます。
●黒一色 = 黒色に反応する光・レーザーの照射。軽い火傷の様な痕が残るが徐々に薄くなる。色素は除去出来てもタトゥのデザインと同じ白く抜けた跡を残す事がある。
●多色の場合 = 黒色しか反応しないレーザーでは効果がない為、炭酸ガスレーザーやアブレーダー(皮フ表面を削る機械)、メスを用いて削皮。擦り傷の様な痕が残るが、徐々に薄くなる。
※右記2つは墨が入ってる深さが浅く均一である事が条件。
自分で入れた場合や素人が入れた場合等あまり上手でないタトゥの場合、色素の深さが均一でない・かなり深いといった事があり、深く削ると治療痕が凸凹になる・色が残る・傷痕が強く残るという可能性がある為、切除になります。
●タトゥが細長い・小さい = その部分を切り取って縫合。縫合した部分に線の痕が残るが徐々に薄く目立たなくなる。タトゥの状態ではない線状瘢痕なので、ケガをした後の傷跡と同じでタトゥを除去したとは思われなく出来ます。
●範囲が広い・形が複雑 = いずれかの方法で数回に分けて施術。もしくはタトゥ部分の切除とその部分への植皮(皮フ移植)。植皮する皮フは、お尻やもものつけ根部分の皮フを使用。最近では培養皮フを移植する事もあります。場所によっては移植皮フの性状や色調が異なり、パッチワークの様になる事もありますがタトゥ部分は完全に除去出来ます。
アートメイクもタトゥも、その深さや状態によって傷跡や毛への影響は様々です。どういう治療をやっていくのか十分に話し合い、納得の出来る治療をしていく必要があります。
また、アートメイクやタトゥを入れる行為は治療行為として医療機関でしか認められていません。但し、医療機関で治療行為以外のタトゥを入れている所は殆どありません。それ以外でのこの行為はリスクを伴うと思って頂きたいですね。アートメイクもタトゥも、身体に傷をつける行為です。
今はシールやペインティング等、身体に傷を付けずに出来るタトゥは沢山あります。化粧も流行りがあります。事前によく考えて欲しいと思います。
取/本当にそう思います。今回もありがとうございました。
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