取材陣(以下、取)／先生、明けましておめでとうございます。今年も引き続きご回答を宜しくお願い致します。
　
早速ですが新年最初のテーマは『脂肪注入』について、どの様なものなのかを教えて下さい。

原口先生(以下、原)／はい、こちらこそ宜しくお願いします。さて『脂肪注入』は、患者さんの脂肪を別の場所から採取して希望の箇所に注入するのですが、主に次の場合に行います。

• 生まれつきの陥凹変形等、顔や頬の片側だけ脂肪が少なく左右非対称の状態を改善したい
• しわやたるみの部分にハリを持たせたい
• 手術を受けた傷跡の部分、腫瘍を摘出した後や予防注射の痕の凹みの改善
• 頬がこけている、目の下のくぼみ等輪郭の形成等。

脂肪注入法は有効な手術法で基本的には全身どこでも陥凹の修正、軟部組織の増量は可能です。
　
しかし、いずれの場合も注入した脂肪が周りから血液を貰って生きていけるようにして定着させなくてはなりません。
　
従って一度に多く入れてしまうとその脂肪塊の表面には血液が流れてきても、脂肪塊の中心部の脂肪には血液が回らずに死んでしまい、その部分は腐って、嚢腫を形成したり瘢痕になってしまいます。従って一度に多くは出来ません。
　
又、注入した脂肪がほとんど全部吸収されてしまい元の状態に戻る場合もありますが、上手に少しずつ行っていけば大体50～60％位は生き残りますので問題ありません。

取／ただし、『豊胸』はオススメ出来ないのですよね？（*にーにゃwebバックナンバー、『豊胸Vol1～3、「豊胸」についてQ&A「脂肪吸引」についてQ&A』をチェック！）
原／はい。豊胸だと必要な脂肪量がとても多く、しかも採取脂肪は全部使える訳では無いので採取する脂肪はその倍近くになります。豊胸を希望する患者さんの多くは、元々痩せた方が多いので採取出来る脂肪の量に限度があり、無理に沢山の脂肪を取ると変にデコボコになってしまう可能性が高いです。これでは豊胸は出来ても別の悩みを作ってしまいます。しかも脂肪注入による豊胸は、注入直後は良くても徐々に脂肪が吸収されて減っていきます。
　
場合によっては全て吸収されて元の状態に戻ったり、デコボコになったり、シコリが出来たり、シコリをガンと間違われて手術になったり…というケースもあります。従って、大学病院や(社)日本美容医療協会に加入している殆どの先生がこの方法による豊胸には否定的です。勿論、少しずつであれば効果は期待出来ますが、脂肪注入の手術回数が数回必要になります。 以上の事をご理解頂いた上で患者さんの希望があれば、私は出来るだけご希望に添うように治療しますが積極的には勧めていません。

取／なるほど。では、実際の施術の流れについてお教え下さい。
原／

1. 脂肪を採取する部分と注入する部分にそれぞれデザイン
2. 脂肪採取部位・注入希望部位に麻酔を打つ。その際、注入希望部位の局所麻酔量を目安に実際に注入する脂肪量を決める
3. デザインに沿って前回脂肪吸引で紹介した注射式脂肪吸引器で脂肪を吸引採取する
4. 吸引した際に壊れた脂肪や血液等を取り除く為に洗浄、ろ過等を行って、綺麗な脂肪だけを抽出
5. 綺麗な細胞を注入希望部位のマークに沿って注入用注射器で注入（注入後吸収されて減る為、少し膨らむ程度、予定量の10～20％多めに注入 ）
6. 術後１～２日はガーゼで抑え、翌日・３日後に診察。その１ヵ月、３ヵ月後…と診察して生着の様子を見ながら、追加注入を行うか否かを決定

取／時間は掛かりますが自分の組織が使える安全性と様子を見て行えるのが安心でいいですね。
　
今回も勉強になりました。ありがとうございました。

脂肪注入（原口クリニックの場合）
・頬　部（両側）…315,000円
・乳房（両側）…525,000円
・その他(１部位につき)…210,000円