取材陣(以下、取)／まず、『脂肪溶解注射』とはどのようなものですか。
原口先生(以下、原)／メソセラピーといわれるもので、高脂血症の治療の際に使われるフォスファチジルコリン（血液中の脂肪を溶かす薬剤）やアミノ酸などいくつかの薬剤を混ぜた注射です。これは様々な薬剤をブレンドして使用する事から、メソカクテルとも呼ばれています。

取／そうなんですね。それらの安全性はどうなのでしょうか？
原／これらの治療、薬剤使用法は厚生労働省では認められていません。従って、外国で製造された薬剤を個人で取り寄せて使われています。以前、大学病院でメソセラピーに含まれている薬剤について薬学部に問い合わせたのですが、その時は「分からない物が含まれている」という回答でした。日本では使われていない薬剤だったようです。もちろん、製造された国では認められているものだとは思いますが。

取／日本では使われていない薬剤…。処置の方法や効果はどうなんでしょうか？
原／気になる部位に注射で薬剤を注入します。注入は注射器やメソガンと呼ばれる注入器を使用します。注入後は、その部位が赤くなったり熱を持ったり痛みを伴う場合があるようです。効果は１回で目に見えて分かる程のものではありません。１回の注入でどれだけ脂肪が吸収されるのか、一度に沢山の量を注入したらそれだけ効果があるのか等はっきりと分かっていないので、効果をみながら数回処置をしていきます。
患者さんが希望されれば取り寄せて処置することは出来ますが、「効果がはっきりしない・内容が不透明であり、使用薬剤によっては肝臓に負担がかかると言われている」という点などから当院では現在積極的に行っていません。効果と安全性がもっと証明されれば別ですが。

取／では『炭酸ガス』についてはどうなのでしょうか？
原／処置の方法ですが、気になる部位に細く長い針を刺して専用の機械で炭酸ガスを注入します。炭酸ガスによって組織の酸素供給量が上がり、新陳代謝が高まり、エネルギーとして脂肪を分解し、燃焼するという仕組みです。注入直後はその部位が腫れてピンク色になりますが、腫れは約１時間程で治まります。
こちらも、一度で目に見える効果が出るわけではありません。どれだけ入れればいいのか、どの位効果があるのかには個人差があり、効果をみながら数回繰り返していく必要があります。 また、炭酸ガス治療も使用機器の薬事法は通っておらず、治療法として証明されていないため厚生労働省は認めていません。
メソセラピーや炭酸ガスでの処置は外科的処置(手術)でない事と金銭的負担がその都度軽いという利点はありますが、複数回の治療が必要であり、効果が出るまでの期間と費用がはっきりしません。そう考えると短期間で得られる実際の効果は脂肪吸引の方がはるかに確実で大きいですね。

取／なるほど。あくまで私のイメージですが、以前事故のニュースを見たので「脂肪吸引」に対しては正直、余り良いイメージがないのですが…。
原／確かに新聞・TVで報道されたように過去に他院で事故がありました。その際に警察に意見を求められましたが、聞くと驚くような処置内容でした。
吸引する場所や吸引量を安全な範囲で無理をせずに基本に従ってキチンと行えば安全です。脂肪吸引の機械も、新しいものはまだですが従来のものは厚生労働省が認めているんですよ。

取／そうなんですね！
では、この続きは次回に詳しくお伺いしたいと思います。