取材陣(以下、取)/まず、ケロイドとはどのような傷のことですか。
原口先生(以下、原)/はい。キズが怪我や手術など何らかの侵襲を受けた後に、元の傷よりも大きくなったり、硬くなったり、赤みや痒み、痛みを伴っている傷跡、または瘢痕拘縮同様に傷跡がひきつれた状態になっているものの事を言います。
ケロイドがよく見られる箇所としては、胸や肩、顔では目頭や耳の部分、関節部などの運動負担のかかる部位、また皮膚が厚く硬い部分がなりやすいです。
また、ケロイドになりやすい人とそうでない人がいて、特にアレルギーを持っている人はなりやすく、男性よりも女性のほうがなりやすいと言われています。人種的に言えば白色人種 黄色人種 黒色人種の方がなりやすいと言われています。また、アメリカなどではこのケロイドは、体質は遺伝が関与しているのではではないかとも言われていますが、これはまだ証明されていません。
取/どのような治療を行うのですか?
原/そうですね、前回紹介した外科手術以外に、保存的な治療法として圧迫・内服薬・注射・塗り薬などでの治療法などがあります。
圧迫法/スポンジやシリコンの板などで患部を圧迫して押さえつける方法です。特に薬は不要な方法です。当院で使用しているのは、粘着性のある柔らかいシリコン板で、それを患部に長期間貼っておいて貰っています。何度も貼りなおしが可能で、汚れて粘着性が無くなれば水に流して洗うと再生します。これは、保湿効果もあるため、ケロイド部分を柔らかくしながら圧迫し、ケロイドを目立たなくしていきます。かなり長期間での治療になります。
- 内服薬/トラニラストという内服薬です。これは元々アレルギーの薬ですが、服用している人のケロイドの色が薄くなった、痒みが治まったという事例が多く出て調べたところ、ケロイドに効果があることが判明した薬なんです。ある程度の期間(3ヶ月以上)飲み続ける事で効果が徐々に出てくるもので、副作用が少ないのが特徴です。副作用としては、たまにこの薬を飲み始めて膀胱炎症状を起こし、頻尿気味になる方がいらっしゃいますが中止すれば戻ります。それから投薬前から肝臓や腎臓の障害のある方には使用を控えます。
- 塗り薬/ステロイド軟膏やヘパリン軟膏を患部に塗って治療していきますが効果は症状緩和程度でマイルドです。また、密封療法といって、軟膏がついたテープを患部に貼ったり、軟膏を塗った上からラップを巻いてより効果を高める方法もあります。しかし、長期間・広範囲での使用は皮膚萎縮などのステロイドの副作用の為、定期的な医師の診察なしには出来ません。
- 患部への注射/ステロイドホルモンをケロイド部分に注射する方法で、ケロイドの症状が徐々に緩和して行きます。患部への直接のアプローチなので効果は期待できますが、ケロイドの部分は皮膚が硬くなっているので、薬の広がりが悪く数本の注射が必要ですし、注射する際に痛みを伴います。
- 外科手術/前回紹介した治療法になります。ケロイド部分を切除したり緊張を緩和しますが、一度ケロイドを生じた患者さんはケロイドになりやすいということなので、ケロイドの手術をしても再発する可能性があります。従って、縫合を細かく縫って縫い跡を残さないようにする、皮膚の深いところまでしっかりと縫合して縫合部に緊張をかけないようにする、抜糸後も傷が広がらないようにテープを貼っておくなどの愛護的処置を行い再発予防をしっかり行い、経過チェックも長期間行います。また、中央だけ切除あるいはくり抜いてケロイドを小さくし、その後は内服薬や軟膏などでの治療を進める場合もあります。
- レントゲン・電子線照射/軟レントゲンや、電子線を患部に照射して目立たなくする方法もあります。これは、そういった設備のある大学病院などでの治療になります。また、これらは照射した部分が一時的に色素沈着を起こし黒くなるなどの影響があるため、前もっての説明が必要です。
取/様々な方法があるのですね。これらは、やはり傷の大きさや状態によって使い分けるのですか?
原/はい。ケロイドの治療は数多くあって、ケロイドの大きさや状態、患者さんの希望などを踏まえて治療します。裏を返せばケロイドの治療法は難しく、残念ながらどの方法も絶対というものはありません。従って効果を見ながら、様々な治療法を併用して治療していきます。
取/なるほど。今回も勉強になりました。ありがとございました。
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