取材陣(以下、取)/ケガや火傷、手術の跡を目立たなくする治療法についてお教え下さい。
原口先生(以下、原)/はい。キズ跡の大きさや形状、状態によって方法は様々ですが、基本的にはその部位を切除して縫い合わせるという手術になります。
ケガをされた時、救急ではその患部をいかに早く的確に処置するかが重要です。従って縫合処置もスピード重視で細かく縫うことはあまり出来ません。救急処置を行なう医師が形成外科の先生というわけではなく、取り急ぎキズを縫って出血を抑えます。その為閉じられたキズ跡が、徐々に広がってしまったり、使用する縫合糸の種類や結び方で「縫い目の跡」が残ったり、治癒過程での管理不足から起こる「キズの肥厚」などからキズ跡が目立ってきてしまうのです。
取/こういったキズも目立たなくなるのですか?
原/そうですね。キズ跡の場所や状態にもよります。この場合は関節部という動きのある場所ですが周囲の皮膚に余裕があるのでキレイになるでしょうね。
キズ跡の修整の縫合は、表面の縫い目を細かくするだけでなく、皮フの裏側(真皮)をしっかりと縫って傷跡の広がりを防ぐ「減張縫合」を行います。これにより表面のキズにかかる緊張を弱めて目立たなくする事が可能です。
状態によって行う手術法が違うので、簡単に紹介しましょう。
Z形成術/まず線のキズ(瘢痕)の場合、キズを切除して両側の皮膚を寄せて縫い合わせます。その線のキズが引きつれを起こしている(瘢痕拘縮)場合は、両側に斜めの切込みを1~数箇所入れてそれを入れ替えて縫い合わせる事で引きつれを緩めます。
W形成術/線の傷跡でもシワの方向に沿っていないキズはジグザグにする事で、キズの方向を分断して目立たなくしたり、また縫合の跡が線路の模様のようについている場合は、その縫い目の部分も合わせて山型に切り取り縫い合わせます。
VY法線/混在するキズの場合は、そのV型に合わせて切開して、その山の部分を中央で縫い合わせる。
単一縫縮術・連続(分割)縫縮術/次に火傷の跡など、面の傷ですが、小さい傷なら・の方法になります。一度ですむ場合もありますが、数回に分けて手術をし、小さくする場合もあります。
- 皮フ移植/面が広く引きつれがある場合などは、皮フ移植を行います。大体お尻や腿の付け根(鼠径部)から皮膚を採取して移植しますが、手術後により目立たなくする為に、手の場合は足の裏、顔の場合は鎖骨のくぼみや胸の横など、より皮膚の状態や色が近い部分から移植します。
- エキスパンダー法(組織進展拡張法)/衣服に隠れる部分や長期入院が可能な場合は、キズ跡の両サイドに風船を入れて徐々に膨らませて正常な皮フを伸ばし、伸びた皮膚で、切除したキズ跡部分を覆います。これは同じ部位あるいは近くの皮膚を使う事でより違和感無く目立たないという利点があります。ただし、1週間毎に風船を膨らませる処置が必要です。
有茎皮弁・遊離皮弁/これは特別な例ですが、血液の流れの悪い所や組織のボリュームが必要なときの治療法です。乳がんの手術で片側の胸がない・鼻を噛まれたなどという場合は有茎皮弁法で修復します。胸の場合は、遊離皮弁といって皮膚だけでなく筋肉や脂肪も一緒にお腹や背中の部分から採取して胸に当てて血管をつなぐ方法もあります。鼻の場合もその横の頬の部分を切り取り鼻に当てて縫合します。
取/状態によって様々な方法があるのですね。これらは保険は適応されますか?また手術時間について教えて下さい。
原/引きつれのない小さな傷等を除いてはほぼ保険が適応される手術です。金額は保険適応で1箇所3万円程度ですが、場所や皮フ移植等の治療法で保険の中でも治療費は変わります。
手術はキズの大きさによりますが30分から2時間の手術で、多くは日帰りが可能ですが手術法によっては全身麻酔や入院治療が必要です。
取/ほとんどのケースで保険適応なのは嬉しいですね。ちなみにキズがケロイド状になっている場合についてお伺いしたいのですが、これはまた次号に。引き続き宜しくお願い致します。
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