取材陣(以下、取)/昨年11月、豊胸効果があるとしてジェルとタブレットを販売していた東京の業者が摘発されましたが、会社は違うにしても同様の内容をうたった広告を普通に見かけます。
原口先生(以下、原)/地方の方はまだ警察の取締りが行き届いていないようですが、東京の方では時々このように摘発されます。脱毛についての事ですがメディカルエステを経営していた医者が職員に脱毛をさせたことで半年間の医業停止処分を受けたこともありますよ。医者がいてもこのような処罰を受けるのですから、ましてや医療資格を持たない所で脱毛を行うというのは如何なものでしょう。厚生労働省は平成13年11月8日に各都道府県の衛生主管部(局)長宛に『医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて』という通達を出して医師法第17条に違反しますと明記しています。従って、脱毛など生体に侵襲を及ぼす事は資格を持っていない医療従事者以外が行うことは禁止されているので、医療従事者以外が行うと「違法行為」とみなされます。
ただ厚生労働省の認定職種の中に「エステティシャン」というものがなく、なかなか取り締まりにくいのだそうです。
取/ジェルやクリーム、サプリなどの豊胸効果があると宣伝されているものに関してはどうなのですか?
原/もし生体に働き広告通りの効果があるならば美容外科でも広まるはずです。学会などでそういった豊胸効果が報告されたり、証明されたことは一切ありませんので、豊胸効果は期待できないと思います。
ジェルやクリームも薬品でないなら化粧品としての承認を得ているのか判りませんし、かぶれ等を起こす可能性も否定できません。
また直接体内に摂取するサプリメントが日本のものであれば販売に当たり厚生労働省の承認を受けているのでしょうが、製造されているのが海外であり、また配合されている薬剤が、まだ厚生省が認めていないものだったりすると、どのような後遺症が出たりするか判りません。以前、中国の痩せ薬で死亡者が出たり、肝臓を悪くしたりしたこともありましたよね?
取/通販やエステなどで見かける豊胸器具はどうですか?
原/前述同様、豊胸効果は期待できないと思います。遠赤外線などの光を当てて血流を良くすることで、胸が張ったようになり一時的に大きくなった感じはあったにしても、持続性はありません。そしてこういったもので豊胸が裏付けされる実証は何もありません。
もし実証があるならば、その器具は厚生労働省の薬事法を通り医療器具として医療業界でも広まるはずです。もともと厚生労働省の認めた医療機器をエステが持っていてはいけないのですから、逆に医療的治療に関係がないものは持っていてもいい訳ですよね。それを医療効果があるかのように広告すること自体が違法なんです。
例えば、『90%の成功率!』とかいううたい文句で広告し、効果がでない人に「あなたは残りの10%の方ですね。他の方には効果があったんですが…」と言ってしまえば言い訳です。患者さんには他の方の事はわからないですから、その残りの10%が逃げ道なんです。本当に90%の人に効果があるなら前述のように医療業界で使用されていますよ。
取/全てにおいて言える事ですが、広告を見る側が賢くならなければいけないですね。
そういえば「胸に電気を流して筋肉を鍛えて豊胸する」という器具を見かけたことがあるのですがこれもやはり…?
原/元々乳房に筋肉はありません。胸の深い部分に「大胸筋」がありますが、ボディビルダーのように筋肉を鍛える事で胸全体が大きくなったとしても、理想的な豊胸とは関係がありません。それに、筋肉を鍛えることで逆に脂肪燃焼するのでは?という危惧もあります。
医学的根拠がハッキリしていないものに関しては、「ジェル・サプリメント・器具」どれを取っても、まだ信用出来ないと思います。
取/それでは、豊胸となるとやはり以前お伺いした「シリコンバッグによる豊胸」が確実なのですね。「ヒアルロン酸・脂肪の注入」等はどうなのでしょう。
原/そうですね。以前お話したとおり、ヒアルロン酸は安全な物ほど次第に体内に吸収される為3ヶ月、持って1年程度の効果になります。なお製品が高額なため、繰り返すとなるとはるかに手術費用を超えてしまいます。また脂肪の場合は生着せず吸収されて効果がなくなったり、シコリになってガンと誤診される可能性もありますし、元々痩せ型の人のどの部分から脂肪を採るのか、採った後がデコボコになる可能性が高いという問題もありますので、私は脂肪注入での豊胸にはあまり賛成ではありません。シリコンによる豊胸は、以前のシリコンジェルバッグと違い、粘稠度が高くより安全性が高いコヒーシブシリコンバッグを用いての外科的手術になります。どちらにしても、医師としっかり相談してそれぞれのメリット・デメリットをきちんと把握した上で、考えていただきたいと思います。
取/今回も大変勉強になりました。有難うございました。
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