痛みと苦しみの意味

痛みと苦しみの意味

 陣痛に対して為す術も無くただ身を任せ、痛みが来たらうめき叫んでやり過ごすしかなく、その終わりも全く分からない。自ら望んだ本当の「自然分娩」(浣腸も剃毛も会陰切開もせず、何にも異常がないなら、陣痛促進剤や鉗子・吸引等使わない)とはこういう事なのだ。


 「この味わった事のない、何とも表現し難い痛みは、お腹(子宮)にいた赤ちゃんが狭い産道を一生懸命自らの力で通って来る為に起こるのだ。そして、赤ちゃんの手助けをする為に私の骨盤も最大限に開こうとする事で起こっているのだ。私も痛いけど、身体を丸め頭の骨をずらして迄して道を作り、出てこようとしている赤ちゃんこそ、もっと苦しく痛いのだ」。
 後半、痛みを増してくる陣痛に対して、その痛みのメカニズムや意味を自分に言い聞かせ、考えていた。
「”陣痛は痛いだけでなく、痛みの波が引いて次の陣痛の合間に脳内から脳内麻薬物質・βエンドルフィンが沢山出ていて、特別な快感・心地よさを得られる”…って本に書いてあったけど、それ、全然分からないんですけど(T_T)!どれが快感で心地いいんでしょうか(>_<)!!」とつっこんだり。 ドライブから帰宅後、ずっとお風呂に浸かっていたのですがその間助産師さんは浴槽にアロマオイルをたらしてくれたり、ホメオパシーを口に入れてくれたりしてくれながら、付きっきりで状態に合わせた呼吸法の誘導と声掛けをしてくれる。夫は傍らで終始ビデオを回し、母はずっと手を握っていてくれました。普段余り会話もせず、時にそっけない対応をしていた母に対し、急に申し訳なかったという感情と感謝の気持ちが湧いて来て「ごめんね、有り難う…」という言葉と、涙が出てきました。  そうこうしてる間に、気付けば23時を過ぎて陣痛の間隔も1~2分と短くなり、会陰部に赤ちゃんの頭が出たり引っ込んだりする排臨状態から頭が引っ込まず、会陰に固定された状態(発露)へ。助産師さんが、『もう頭が見えてますよー!ゆっくり横を向いて出てこようと赤ちゃんも頑張ってますよ!!』と言ってるが下を見てもよく分からなかったので触ってみると、確かに陰部に何かが固定してある。 「おぉ、これは頭なのね!」  赤ちゃんご対面間近という実感と、やっと痛みからの解放が見えてきた事で心身ともにヘロヘロだったが元気が出てきて「も、もうすぐやね、よっしゃー最後の痛みに耐えるのだぁぁっ」といきみ過ぎないように呼吸を気を付け、ひたすら待つ。体感変化では会陰部に焼けるような、唐辛子を擦り込まれるような熱くジリジリした感覚と、体内から押し出されてくるような。 「ぬおおぁああっ…!!!」 次の瞬間、『あー!産まれました、おめでとうございます!!』助産師さんがすぐさま出てきた赤ちゃんを受け止めると同時に首に巻いてたへその緒を解いて、産まれたての赤ちゃんを私の胸に渡した。  長い陣痛の果て、やっと対面出来た坊はだっこした瞬間から懸命に頭を上げ、目を開いて私の顔をじーっとみている。それはまるで「ぼくのおかあさんってどんな人なの?」といわんばかりに!私は胸が熱くなり、愛しい坊に頬擦りして「会いたかったよぉ、きつかったね、よく頑張ったねぇ!出てきてくれて有り難う!!」と泣きながらずっと話かけていました。 坊が産まれるまで19時間59分。時刻は23時37分。まさにこの日の満潮、5分前の出来事なのでした。 image_vol18.jpg

(*にーにゃ編集長jeek)

2007/10/01