てんやわんやの大騒ぎ!

てんやわんやの大騒ぎ!

 10時台になると、それ迄15分間隔位で来ていた波の間隔が短くなって来ました。「あーイッタイな…。仕事が進まん。座ってた方が楽だからトイレで作業するか。産む前に大も出しときたいし!」と資料と鉛筆を持って便座に座り、作業をしていました。引いては押し寄せる陣痛の波を何とかやり過ごしながら「ちょろっとでも事務所に行って、作業せねばなぁ。何時位に行こうかな…」と満潮の21時31分迄、かなり時間があるので「合間に事務所に行こう」と考えていました。


 がしかし。痛みが治まらない。「前回この時期にこんなに痛かったっけ…うぅ、やっぱ陣痛は痛いぃぃぃぃぃ…」便座に座って仕事をしようにも、頻繁に来る陣痛を何とか乗り越える位しか出来ません。ふと「今、子宮口ってどうなってるんだろう?」と気になりトイレットペーパーを片手に取り、手を伸ばして触ってみると…「ぅわ!めっちゃ開いとるっ!!!」実際はどうか分からないけど、触った感覚でいうと赤ちゃんの頭が何とか出てきそうな位は開いてます。予想外の状態に一人ビビりながら、触れたペーパーに目をやると「血っ!!!」何だか様子がおかしい!本能的にそう感じ、トイレ前の玄関で掃除機を掛けているオットに「Tくんっ!!!」と声を振り絞り、大声で呼びかけました。『何ー、呼んだ?』「K(助産師)さんに電話して聞いてっ。結構な量の血が出てるけど大丈夫か、って!」『わ、わかった!』このやりとりの間も激しい陣痛がひっきりなしに来ていて、陣痛間隔を記しているメモを見ると5分間隔です。
 傍らでオットが助産師さんに携帯で状況を伝えると『“痛みの間隔は?”って!』「…ご、5分っ」『(5分だそうですっ。あ、はい!)“電話替われるか?”って!!』「…む、無理っ」『(無理だそうです!!)』次第に下腹部に痛みが移動するような異変を感じ、その時初めて意識しました。「もしかして、産まれる…かも?」『“産まれる感覚があるか?”って!!』「あ、ある!!っていうか産まれそうっ!!!」そう言い放った後に大きな陣痛の波が来、それを乗り越えると同時に無意識にイキみました。便座上で中腰姿勢となっていた私は「次、(産まれて)来るかもしれない!」覚悟を決めた瞬間、スポーン!!!
 とっさに股の下に両手を構え、滑り降りて来た我が子をしっかと受け止め、「ふんぬぅぅぅっ!!!」っとそのまま胸元に抱え上げる私。(視界の左側で『あーっ!産まれましたぁぁっ』と携帯に叫んでいるオットの姿あり)
 出産直前の排臨(赤ちゃんの頭が見え隠れする状態)や発露(赤ちゃんの頭が見えたままの状態)等一切なく、それはまるで小学生の時に体験した避難訓練の「救助用布袋滑り台」からシャー滑り降り、ひょいーと地上に出てきた、あの勢い。本当にスポーン!と産まれて来たのでした。

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 ちなみに手で構えて受け止め、抱き上げる迄の一連の動作は無意識の内に行っており、驚く程に冷静でした。
 そんな中、突然の出来事(きっと彼女からすると、暗くて安全で心地よかったお腹の中から狭い道を通り降り、あっという間に未知の眩しい場所に出てきた、という感じであろうから)に驚いたのか、産まれた瞬間から家中に響き渡る程の大きな声で絶え間なく怯え泣いています。「やっと会えたね、Nちゃん!驚いたよね、大変だったね!!大丈夫よ。でも早く出てきてくれて有り難うね。嬉しいよ。陣痛、長引かなくて助かったよ」と語り掛けると、一生懸命に上を向き、目を見開いて私の顔を見ながら泣いています。私は彼女の顔や頭を、着ていたパジャマで拭いてあげ、手足の指等を触り見て、異常がない事を確認し、「ふぅ」と便座に腰を下ろした。
 携帯で助産師さんから指示を受けているオットに「バスタオルを早く!」と頼むと、オットは携帯を放りなげ(助産師さん通話状態のまま(^^;))、うろたえてます。ババがバスタオルを持ってきました。ババも余りに突然の事に気が動転し、Nちゃんを見て「よかったね…おめでとう。無事産まれてよかったね…」と半泣きで呟いてます。その後ろでは沸騰した笛付きケトルが「ピィィィィーーーー!!!」と鳴りっ放し、水中出産する予定で準備していた風呂のお湯もドバドバ溢れ出たままです。もう周りはてんやわんや。
 そして坊(3歳)は泣いているNちゃんに向かって「大丈夫よー。Tちゃんも、Jちゃんも(私とオットの事)ばぁばも、Sくん(坊)もみんないるから、泣かなくていいよー」と話し掛け、いなくなったかと思うと再び戻り、Nちゃんの目の前に何か差し出しています。見ると、彼のお気に入りの黄色い車を手の平にのせ、Nちゃんに見せている様です。彼なりにあやしているつもりらしく、その姿に思わず涙がこみ上げて来ます。
 慌ただしさの中、気分も落ち着いたので抱えて中腰のまま部屋に移動し、横になりました。
 Nちゃんを胸の上(心臓の辺り)で寝かせるのですが、時折思いだした様に泣いています。(坊の時は産まれて出て暫くして「ほぎゃっ」と一声泣いただけで、後は大人しく寝てたけどな…何でかな…。Nちゃん大丈夫かな…)前回と様々状況が違うので内心少し心配になっていました。そうしている間に、福岡在住のサポート助産師Hさんが到着。(坊の時に御世話になった助産師Kさんは昨年より本拠地を長崎に移しており、到着に時間が掛かる為先にHさんが来てくれた)『大変でしたね!ビックリしたでしょう』「ぃやあ、そーですね、ははははは!」

(*にーにゃ編集長jeek)

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2007/10/01